2度の稽留流産ののち、私は“選ぶ”ことを決めた。
「私の身体に問題はない」
そう思えたとき、霧が開けたかのように “提供卵子” という選択肢が視界に入ってきた。
✍️ 記事のはじめに
本記事では、私が提供卵子という選択肢に舵を切った過程を綴っている。
妊活において、何を選ばなかったかではなく、何を選んだかによって、人生は決定的に変化していく。
選ぶという行為は、諦めでも妥協でもない。
それは、自分の人生に責任を持つということである。
この記事が、同じように悩みの中にいる誰かにとって、参考のひとつとなりますように・・・。
◆ 「着床はする。でも——」
2度目の稽留流産のあと、私はその原因をひとつひとつ潰しにかかった。
着床したのは、これが初めてではない。
着床できたということは、私の身体はある程度整っていると考えることができる。
であれば——
問題は卵子の側にあるのではないか。
◆ 「提供卵子を使う」という決断
私は、そこでひとつの大きな決断を下した。
提供卵子を使うことに決めたのである。
夫はそもそも、遺伝子へのこだわりがない人間であった。
私自身は、当初こそ葛藤があったが、
これ以上、同じことを繰り返しても意味がないと判断した。
せめて40代のうちに妊娠しなければ、身体がもたないかもしれない。
いや、それ以前に、心がもたないと感じていた。
◆ 日本とアメリカ、制度の違い
日本では、第三者からの卵子提供による不妊治療に関する明確な法律が存在しない。
そのため、卵子提供の実施は法的に「違法ではないが、合法とも言えない」という曖昧な状態が続いている。
日本産科婦人科学会は、体外受精は夫婦間で行うべきとする見解を示しており、
第三者からの卵子提供による体外受精・胚移植を認めていない。
このため、国内での卵子提供は非常に限定的であり、主に親族や知人からの提供に限られている。
一方、アメリカでは商業的な卵子提供(エッグドナー)が合法で、
広範なマッチングサービスが存在する。
アメリカ疾病対策センター(CDC)の報告によると、
生殖補助医療(ART)の12〜15%が提供卵子による治療である。
◆ プロフィールから選ぶ“未来の種”
エージェンシーに登録すると、卵子提供者のリストとプロフィールを見ることができる。
条件によってフィルターをかけて探すことも可能である。
提供者は皆、厳しい検査をパスしているため、健康面で大きな問題は基本的にない。
中には「乱視」や「喘息」といった些細な健康情報が記載されていることもあれば、
「整形歴あり」と自己申告している人もいる。
多くの提供者には、幼少期と現在の写真が数枚添付されており、
学歴や職業、趣味、性格などのプロフィール情報も記載されている。
◆ 会うことのない理想のパートナー
まさに、結婚相手を見つけるマッチングアプリで
“ベストなパートナー”を探すような感覚である。
ただし違うのは、そのパートナーとは直接会うことはないという点である。
どの方にお任せするかを決めたとき、
私は静かに、しかしはっきりと、ひとつの未来を選び取った。
◆ 選ぶのは、私
ドナー選びは、私が一任した。
ここには、ひとつの切ない女心が潜んでいる。
夫が女性の写真を見て、その中から“好みの女性”を選ぶという行為が、
まるで浮気をされるかのようで、どうしても受け入れがたかった。
だから、選ぶのは私である。
◆ 新しい受精卵を手にするまで
ドナー選定から、実際に受精卵を得るまでには約3ヶ月かかる。
金額はもろもろ合わせて、35,000〜70,000ドルとされている。
時間もお金もかかったが、
私たちは、新たな受精卵を手にした。
✉️ 最後に
私にとっての選択とは、壁にぶつかったとき、その壁の下に穴を掘るようなことである。もしかしたら、壁にピッケルを突き刺して登ることになるかもしれないし、壁の穴を見つけてそれを広げる必要があるかもしれない。
大事なことは、壁の向こうにあるものを手に入れるという揺らぎない意志と欲望。ただし、それが本当に欲しいかどうか、自分によく問いただしてみること。欲しいならGO! 頭を使ってね。
正面突破ができなければ、進む道を探せばいい。そうして進んできた道が、今の私の人生をつくっている。
【次回予告】
次回は、その後の治療のこと、そして再び迎える「着床」について綴ろうと思う。